2019年11月20日水曜日

京都OHBL奥田浩子のBeauty Memories     " デザインの三大要素である 色(カラー)と形(シェイプ)と質感(マテリアル)"

「 自信の色(カラー) 」

”衝撃的であった。あまりにも色の対比が美しくて、目を見張った。”

メイクアップの仕事を始めて数年たった頃、自分の中に大きな疑問がわいてきた。
それは、メイクアップの色を決めるときに、
一体何が根本になっているのかということであった。
その人が着ている洋服?トレンド?はたまたその人の好み?
どのような場所に行くのか?なりたいイメージ?
そんな時にパーソナルカラーの理論と出会い、かれこれ30年以上が経ち、
その出会いが、今まで仕事を継続できた大きな力となっている。
その人がもつ身体の色と調和する色をコーディネイトすることは、
メイクアップだけではなく、ヘアカラーやファッションなど、
すべてにおいて有意義で、失敗もない。
パーソナルカラーは春夏秋冬という4つのカラーグループにわかれており、
自身のカラーグループを身につけると間違いなく美しく見えるのだが、
逆に、こんなにも多くの人がいる中で、
たった4つのグループにしかわかれていないのも事実である。
例えば同じカラーグループが似合う人であっても、老若男女それぞれに個性があり、
ナショナリティがあり、ライフスタイルがあり、またその人の好みもある。
そういった場合、そのカラーグループをどのように工夫して使いこなすのかが、
重要なポイントになっているように思うのだ。

”初めて見た時は、衝撃的であった。
デザインされたような美しいボディーカラーは、ボディーメイクを
しているのかと思うほどであった。
尋常性白斑まだら肌の、
世界を虜にするトップモデル、ウィニー・ハーロウ 。”

テレビのインタビューで、
「あなたは、素晴らしく勇気があるのね。」というその問いに、
彼女はこう、答えていた。
「私は勇気があるんじゃない。私には自信があるのよ。」

人にパーソナルカラーをアドバイスするその前に、
人にはその人の「色」がある。カラーを分析して、
人を美しくする手助けをすることは、
本来のその人の個性に自信をもってもらうための、一つの 
架け橋になるのではないだろうか。
ウィニー・ハ-ロウは、自らの個性を最高の武器にした。
私は、誰もが持っている最高の個性を自信につなげてもらえるように
「自信のカラー」を届けたい。




「 踊る形(シェイプ) 」

何の意味があるのか、つまらない授業だと思った。
アーティストでもあり、大学の教授でもあった先生の、
その日の課題は「線を描く」ことであった。
ケント紙1枚をわたされ、定規と2Bの鉛筆で、ひたすら線を描くのである。
とにかく、何本も、何本も、直線を描くのである。
そんな授業のことを今、仕事をしている時に、とてもよく思い出す。
その人に最も美しい眉を描こうとする時に、
いつもケント紙と定規と2Bの鉛筆が脳裏をよぎる。
眉は、ちょっとした筆圧や描くスピードで、その仕上がりが随分と違ってくる。
レッスンでは、できるだけ優しく描いてね、と教えるのだけれど、
筆圧の調整はなかなか難しい。
きれいに描きたいと思う気持ちが、どうしても余計な力を加えてしまうのだ。

「見てごらん。よーく見てごらん。
同じ線はなかなか描けないでしょう。たった1本の直線なのに。
それも同じ鉛筆を使って同じ定規をつかっているのに。
同じ線じゃないでしょう。
同じ線を描くのさえ難しいのだから、
線をつないで形(シェイプ)を描くのは、もっと難しいんだよ。
そして、同じステップをふむように、踊るように線を描くと、
一つのストーリーが生まれるんだよ。」
これがその授業の合評会での、先生の教えであった。

どんな顔にも必ずストーリーがあり、
その中での眉の範囲は決して大きくはないけれど、
大切なプロローグを担っている。
さぁ、あなただけのストーリーを華麗なるステップで、
眉を描くことから、今日もはじめてみませんか。





「 尊い質感(マテリアル) 」

鏡に映った風呂上がりの自分の身体。
ちょっと待ってよ。誰かに似ている。あそことここを隠すだけで、
そう、確かに、よく似ている。わぉ、自分の父親だ。
なんだか年々父親に、どんどん似ていくような気がする。
もちろん性別は違うのだが、何が似ているのかというと、
それは質感(マテリアル)なのである。
肌の厚みやきめ、隆起のしかたや、なんとな~く醸し出す様々なマテリアルが、
とってもよく似ているのだ。
メイクアップにおいてマテリアルを表現するときには、
まずは化粧品の選択、使用する量や順序、そしてタッチが重要である。
同じ材料であっても、表情のでかたは実に様々で、
まだアシスタントの頃、パフにパウダーをとり、
掌でどれほど温めるかによってマテリアルが変わることに、
心底感激したことがあった。
それほどに、マテリアルの表現は繊細なものなのだ。

今まで親子や兄弟姉妹でお越し下さる方を数多くレッスンしてきたが、
そこでよく感じる事は顔や形や声などより、
マテリアルがとてもよく似ている、ということである。
そして、そのマテリアルを感じた時、
なぜだか、ふっと幸せな気分をあじわえるのだ。
父親と自分のマテリアルが似ているように、私と娘のマテリアルもよく似ている。
年老いた父親の背中を熱くしぼったタオルで拭いていると、
自分の老後の背中をみたように思う。
寒い季節に娘と二人、
リビングのソファーでブランケットにくるまりテレビをみていると、
その若さの弾力に、なつかしさを感じることがある。
もしも育児に疲れはてて、自分の子を傷つけてしまいそうになった時、
年老いた親が情けなくて哀しい気持ちになった時には、
ぎゅっと抱きしめたり、手を握ってみてはどうだろう。 
受け継がれていくマテリアルは、やさしくそして尊いものだと、
気づけるのではないだろうか。






「 デザインの三大要素である
   色(カラー)と形(シェイプ)と質感(マテリアル) 」

シュウウエムラのアトリエ時代に、デザインを構築するには、
3つの要素が必要であると教えられた。
これは、人をコーディネイトする場合においても大変重要であるが、
まず、そのまえに、人そのものがクリエイティブである。
そして唯一無二の存在である人を、
色と形と質感でデザインすると、その人は、より一層、
輝きをますように思う。
そして、人は、もっと、その人らしくなる。 
あなたは、あなたらしく、もちろん、私も、私らしく。

今は亡き世界的メイクアップアーティスト植村秀先生に、2019年今の私の思いを捧ぐ。

2019年8月21日水曜日

京都OHBL奥田浩子のBeauty Memories     ” 幸せになる、いきる顔 ”


顔の中の美しく整いすぎたラインや、まんまるとした大きさ、
そしてすっきりした高さなどは、不思議なもので、
嘘だと、わかる。
とても美しく仕上がっている嘘もたくさんあるが、
なぜかちょっとした違和感がどこかにあり、
そこに必ず、目がとまってしまうのだ。
そんな嘘には、自分自身を美化したいと思う切実で、
せつない気持があることを思うと
それを暴こうなどとは決して思わないし、
もちろん否定だってしない。
けれど嘘をつく前に、一度でいいから
 
メイクアップの真髄と出会ってほしかった、と思うのだ。
メイクアップをあきらめてほしくなかった、と思うのだ。

「メイクは習っても、結局うまくできない。
だから、メイクを習う必要はない。」と、
ある人がいったことがある。
もちろん、すぐには上手にならない。
だってメイクは練習だから。だって顔は奥深いものだから。
そして、その人に必要なテクニックは、オンリーワンなのだから。
けれど「どうすればいいのか」がわかると、意外にたやすく、
顔の美しさはあっというまに生まれてくる。
だから、ずっと一緒に生きてきた、
そして、生きていく自分の顔と、真剣に向き合ってほしいと願う。
もっと、自分の顔を愛してみれば?と、思うのだ。

自分の肌の手入れをすることや、メイクを練習することは、
すなわち自分自身への愛そのもの。
愛することが先なのか、
愛せるように嘘をつくことが手っ取り早くて楽なのか。


今回の移転でいろんなものを断捨離したが、
それは、また、新しい気持ちのスペースをつくることにもつながった。
その新しくできたスペースに、美容人生40年に向けて、
これからしていきたいことを、少しづつ埋めこんでいこうと思う。


これから一番していきたいことは、いきる顔をつくること。


一人でも多くの人と出会って、いきる顔を提案すること。
心がいきる顔、自信をもたらしてくれる顔、
人を思いやるマナーとしての顔、
メイクアップはその人の嘘の顔をつくるのでない、
いきる顔をつくることだ。
その人の、その生きざまに嘘をつかない顔をつくることだ。

そして必ず、いきる顔は、「幸せな気持ち」 につながる。
美容には、それを叶える力がある。

2019年5月15日水曜日

京都OHBL奥田浩子のBeauty Memories     ” 開け ビューティードアーズ”


小学校5年生の時、家庭科の授業で刺繍の仕上がりがとてもいいと、
先生に褒められた。
高校の美術の授業では、オリジナルの絵本を作った。
タイトルは「ひなこさんのお見合い」お見合いを通して
本当の自分らしさに気付いていく物語は、先生から絶賛された。
もちろん成績は最高得点!イェーイ! V V V !
だから、自分はちょっと手先が器用な子、
オリジナルな発想が得意な子、
そんな風に勝手に有頂天になり、
勘違いしてしまった。

その後私は、すばらしく前衛的で、
また、その当時とてつもなく勢いがあり、
美容業界に革命をおこしたシュウウエムラの
アトリエという環境の中で、
自分の勘違いと甘さをこれでもかと思い知らされ、
技術を身につけることの真髄を教わった。

毎年2回行われる一週間の研修は大変厳しく、
早朝から深夜まで技術を学び、
評価が悪い次の年は、契約破棄という条件だった。
私は入社して1年目はそこそこであったが、2年目にどん底に落ちた。
次から次へと入ってくる新人のメンバーにどんどん追い越され、
なんとビリから2番目の結末で、そのビリは研修の一週間前に
入社したメンバーという、最低のあり様だった。
今でもその時の、人生最大の恥ずかしい、情けない、
どこかに消えてしまいたい感情を、忘れることはない。
ピリピリした緊張感の中、
私の人生最悪の結果が大きくはりだされた表を見て、
1人の先輩が私の肩をポン、と軽く叩いてくれた。
その当時の時間を共有した仲間は、最高のライバルであり
、一生涯を通じる最高の心の友となった。

その後、契約破棄が決定されるであろう最後の研修に向けて、
私はそれまでの人生の中で最大に自分を追い込む練習を、
毎晩、深夜まで重ね続けた。
グロテスクな言い方だが、指から血が出るほど練習した。
そんな深夜の練習を続けていたころ、ある出来事があった。
「あぁ、そうか、そうだったのか、こうすればよかったのか。」
何とも表現しにくいのであるが、
深い感動が身体中をかけめぐり、ひとり、号泣した。
ひたすら練習する事の大切さと、
決して驕らない自分への戒めを痛いほど感じ、
技術者としての一枚目の扉が、やっと開いた瞬間だった。

その時の練習が報われ、研修でのリベンジを果たし、
この仕事を続けてこられた私が、今、ここにいる。
技術の仕事とは何なのか、
仕事を続けていくためのメンタルをどのように保っていくのかを、
痛感できたあの環境に、今も心から、深く、深く、感謝している。

一枚目の扉が開いて安心したのもつかの間、
すぐに、この扉はずっと続いていくであろう事にも気付かされた。
これからも、いくつもの扉を努力して見つけ、
そして開いていかなければ、技術の仕事を続けることはできないのだと。
最後の最後まで、開かねばならない扉は、必ず存在するのだとも。

念願の路面店を6月1日にオープンする運びとなりました。
これもひとえに、今までご愛顧いただいた皆様のおかげだと、
心より厚くお礼を申し上げます。
その人の、いくつもあるであろう美しさの扉を、
誠意をもってご提供したいという気持ちをこめて、
新店舗名は「オーヴルビューティードアーズ」です。
いつでも、扉を気楽にノックして、お立ち寄りください。
そして私たちはこれからも、プロとしてのプライドをもって
美容の仕事人としての扉を開きながら、
精進していきたいと思っております。


また、あけるの? まだ、開くの?
えぇ、もちろん。
美容の仕事人生を続ける限り、扉を開き続けることは、
もう、ずいぶん前から、心に決めているのだから。

2019年2月15日金曜日

京都OHBL奥田浩子のBeauty Memories     ”美容のコトバ”


2019年がスタートし、今年はわが娘もオーヴルで支度をして、
無事、成人式をむかえた。式を終え帰宅した娘が、
「ママ、ホンマにありがとう。うれしかった!」の一言に、
ほどよい湯かげんの温泉につかったような、
まったりとあたたかい気持ちがひろがった。

86歳になる独り暮らしの父と一緒に夕飯を食べ、
一人暗い夜道を帰る時に理由もなく、なぜだかいつも、泣けてくる。
そんな時、ずっと愛読している小説家が書いていた言葉が
頭をよぎり、少し、気持ちが楽になる。
「愛情あふれて育ててくれた親に感謝の気持ちはつきない。
けれど、人は親のために生きているのではない。
そして、愛情あふれて子供を育ててきた親も、
子供が自分のためだけに生きていくことなど、
決して望んではいない。」

仕事の最中に、
「ちょっとだけ細くして、少しだけ右にずらして、
もうちょっとだけこの色をたして。」などと思うことがよくあり、
ほんのちょっとで何がかわるのか、ほんの少しに意味があるのか、
と悩むことがある。
けれど、私が尊敬し憧れる世界的アートディレクターの石岡瑛子氏の
言葉を思い出すと、俄然、勇気がわいてくる。
「ほんのちょっと、にこそ、こだわりがあるのよ。ほんのちょっと、
の意味がわからない人には、クリエイトすることはできないのよ。」

その人のその言葉で、幸せな気持ちになることがある。
その人のその言葉で、救われることがある。
その人のその言葉で、勇気がわいてくることがある。

早いもので、2004年から「OHBL オーヴル」としてスタートし、
今春で16年目に突入する。
オーヴルはこれからも、誰もが幸せな気持ちになるような
「美容のコトバ 」を、自分たちの手指を使い、発信していきたい。
その人の魅力の引き金をひく存在でいたい。
すこしおまけに、ユーモアもとりいれながら。

さて、今年は初夏の頃に、新しい場所で、新しいオーヴルを
お届けできそうです。
皆様には、また、あらためてお知らせいたします。
さぁ、その前に、まずは、「春」がやって来る!
どうぞ、皆様、冬眠から目覚めて、顔と心の更新を、オーヴルで。

2018年11月7日水曜日

京都OHBL奥田浩子のBeauty Memories     ”美容のフォーチュン”


日本の正統派エレガンススタイルの基礎を作り、
育てたファッションデザイナーが88歳で亡くなった。
その人は、
「これ見よがしなのがイヤ。大切なのはバランスとリズム感。」
と話した。

美容においてのこれ見よがしとはなんだろうと思い巡らしてみると、
塗りすぎ、付けすぎ、描きすぎ、につきると思う。
また、美容においても同じく、バランスとリズム感は大切だが、
それに強いてつけ加えるなら、肌質感も、重要であると思う。

私は少しでも時間があれば、百貨店の化粧品フロアをめぐることを
ライフワークとしているのだが、
いつもながら、女性たちが美しさを求めてメイクカウンターの前に
座っていることの多さに圧倒され、勇気づけられ、
そしてなお、挑む気持ちでいっぱいになる。

カウンター越しにビューティアドバイザーと話す様子には
国境など全くなく、
ただただ、自分の未来の美しさを求める気持が溢れている。
そんな女性たちに美容を提供するプロとして、
テクニックや知識をしっかり伝えることはもちろんだが、
他にも決して、忘れてはいけないことがある。

今は亡き、偉大なるファッションデザイナーが服作りで
最も大事にしたのは「愛を込めること。」
「生地を愛せば、生地がこうして欲しいとささやく。
偽りのない気持ちで作った服の良さは、
着る人、見る人に必ず伝わる。」
それが信条であったそうだ。
また、日本の若者に伝えたいことを尋ねると、
「トイレで手を洗ったら、次の人のために洗面台を拭く事。」
と即答されたそうだ。

私はもう、決して若者ではないのだから、
自ら次の人のために洗面台を拭くだけではなく、
「拭いてあげてね。」と、
伝えていくことをしなければならないと、強く、思う。
そして、伝えていく自分になるためには、
自分を律することが必要なのだとも。

その人に伝える何か。それを提供するには、愛がいる。
美容という仕事には、特に、手指から伝わる愛が必要だ。

35年前、私が開けたフォーチュンクッキーの中には、
心から望んでいた「美容」の文字の紙きれがはいっていた。
その紙を今もなお、胸元のポケットに入れたまま、
嬉々として、歩いていこう。
その人が望む美容のフォーチュンの歩幅にそいながら、
愛をもってこれからも、さらに歩き続けよう。

2018年8月6日月曜日

京都OHBL奥田浩子のBeauty Memories     ”優しい気配 素敵な気配”


ちょうど7年前の、初夏の頃から冬にかけての出来事であった。
毎晩自宅のリビングで一人になると、気配を感じる。
それはぞっとするような気配ではなく、なんとなくあたたかくて、
ふんわりと包まれるような気配であった。その気配は半年ほど続き、
次の年になったとたん、すうっ〜と消えてなくなった。

仕事の移動中によくあることだが、
イヤホンを耳にして終着駅になっても気がつかず
寝入っている若者に、お節介かもと思いながら
肩をたたいておこしても、恥ずかしいのか、
びっくりするのか、一度もお礼を言われたことがない。
( まっ、別にいいですけどね〜。笑ちょっと怒)
若者よ、イヤホンをはずして、気配を感じよ。
もう、起こさないよ、と思う中年オバさんの私である。

気配を感じることは、大切なことである。
気配を感じるには、静かな心を維持し、柔らかい心でいて、
音や空気の流れを感じとろうとする事であると思う。
自分の体が騒がしかったり、硬い心だったりすると、
気配を感じる事はできない。
私は、気配を感じられるような人でいたい。

今夏は地震からはじまり、豪雨に台風、熱帯夜と、
自然の猛威を感じる夏であった。
このDMを皆様のお手元にお届けする頃には、
少しでも、秋の気配を感じられるであろうか。

今秋のメイクアップのテーマは、
「Baked shy  ベイクドシャイ」
ちょっとくすんだベイクドカラーをオーヴル流にデザインして、
控えめだけれどモード感あふれるメイクをお届けします。
私の人生にかけている⁉“ヒカエメ” というキャッチフレーズを、
メイクアップで秋らしく新しく表現して、秋の素敵な気配を、
皆様に感じていただければと思っております。

7年前の出来事、
あの気配は亡き母だったのだと後になって気がついた。
寝たきりになってから9ヶ月後に母は逝ったが、
その後も半年間、気配となって私のそばにいてくれたのだ。
そして、次の年にかわる頃、
本当に安心して、旅立って逝ったのだろう。
気配を感じられるような人として、
これからも生きていきなさいよ、と、
優しく、あたたかい気配を残して。

2018年6月13日水曜日

京都OHBL奥田浩子のBeauty Memories     ”旅と青春、そして恋”

何かを探している時には、旅にでる。
といっても大げさな荷物を持っての旅ではなく、
小さくても旅にでるのだ。
いつもの通い慣れた道であっても、旅の気分になれば、
気付くことがあるはずだ。

そんな時に見つけた、とある店。
その店のそこかしこに、仕事に対する情熱や信念が感じられて、
探しているものがみつかるかもと、何度も何度も通いつめる。
カウンター越しにみる、店主の立ち居振る舞い、選ばれた器、
選ばれた食材、自身の手を見つめる厳しいまなざしや、
うってかわって、はにかんだように見送る笑顔に、
私の心は釘付けになる。
何度目かの訪れで、自分の指針を与えてもらったような気がして、
身体がすうっと軽くなった。
旅をして、求めていれば、必ずみつかる。
ビビッとくることが、きっと、ある。

そんな時私は、いつも青春を感じるのだ。
青春は若い時だけのものじゃない。
そんな青春なんて、もったいない。

今は亡き、アメリカのとある詩人が残した言葉。
青春とは、人生のひとときのことではない、
心のあり方のことなんだと。
信念は若く、疑念は老いると。

あぁ、恋していたいなぁ。
私はこれからも、青春に恋をしていたいなぁ。
青春を感じながら、人生に恋をしていたいなぁ。
青春を感じられる人と、ずっと一緒にいたいなぁ。
ともに青春をみつけた人と、仕事をしていきたいなぁ。
青春を感じてもらえるような、美容を伝えていきたいなぁ。

何かを探して旅をして、新しい青春をみつけたら、
梅雨の合間に晴れわたる青い空を、恋する気持ちで一人、見上げる。

今年もまた、新しい夏が、やってくる。
旅と青春、そして恋。
余計なものは、もう、何もいらない。