2016年11月20日日曜日

京都OHBL奥田浩子のBeauty Memories     ”わたしの 触り方”



敏感な人にこそマッサージが大切。

先日、大御所エステティシャンの講話を拝聴し、
まさしくその通りとうなずいた。

今まで、美容の仕事を通して、どれだけの人を触ってきたことか。

はじめて会った人、それほど詳しくわからない人、をどう触るのか。

人を触るはじまりとなるスキンケアこそが、
コミュニケーションのはじまりだと、
偉大なる師、シュウウエムラ氏から教わった。
数々の仕事の現場で、さまざまな顔を触るとき、不思議といろんなことを感じる。



皮膚がかたい人はこわばっており、目の周りを瞬く人は何かをおそれ、毛穴がひろがっている人は何かに怒り、しわが深い人はあきらめかけていることがあり、そして、たるみのある人は、冷えていることに気付かない 。
だからこそ、皮膚がかたい人はやさしさを、目の周りを瞬く人はゆるぎない信頼を、毛穴がひろがっている人は中庸を、しわが深い人は励ましを、たるみのある人は温かさを、求めているのではないだろうか。



私たち美容を仕事にするものは、まずはこの人に、
自分を委ねようと思ってもらう事がはじまりだ。

顔の真ん中から外に、「はい、いちにさん、いちにさん…。」

自分の指を躊躇なく、人の顔にしっかりとはわせて、
やさしくやさしく包み込む。



人間は、どこもかしこもまるく、かどばっていない。
まるく、まるく、触るのだ。



美しくなることは幸せであり、
そのはじまりである触ること、は、
無言のコミュニケーションだ。



ずいぶん前の話になるが、娘が生まれて間も ない頃、
毎晩盥にお湯をはり、薄いガーゼでそっとなでると、
うっすらと白い藻が出て、なんだろうとすくってみたら、
垢が浮いているのだった。

その垢を手のひらにすくいながら、すくすく成長しているのだと、
愛しい気持ちが胸いっぱいにひろがった。



また、少し前の話になるが、脳腫瘍の除去手術の後、
9ヶ月ほど寝たきりだった母に、
少しでも気持ち良くなってもらおうと
カサカサの足にクリームをつけてマッサージをすると、
びっくりするほどの垢がでた。
話すことも、食べることも、
寝返りする事さえもできなかった母の足は、
触ることを繰り返すうち、最期は生まれたての赤ちゃんのような足になった。



一年のそろそろ終わり頃になると、いつもこんな言葉がうかんでくる。
 

つらなる。  つながる。  つづける。


この美容道をこれからも、
つらなりながら、つながりながら、さわりながら、つづけていこう。




触ることは何かを伝える。

触ることで何かを感じる。

とことん、しぶとく、触りながら、美容の力を信じるのだ。

そして、一人でも多くの人に、わたしの触り方を伝えていくのだ。