2018年11月7日水曜日

京都OHBL奥田浩子のBeauty Memories     ”美容のフォーチュン”


日本の正統派エレガンススタイルの基礎を作り、
育てたファッションデザイナーが88歳で亡くなった。
その人は、
「これ見よがしなのがイヤ。大切なのはバランスとリズム感。」
と話した。

美容においてのこれ見よがしとはなんだろうと思い巡らしてみると、
塗りすぎ、付けすぎ、描きすぎ、につきると思う。
また、美容においても同じく、バランスとリズム感は大切だが、
それに強いてつけ加えるなら、肌質感も、重要であると思う。

私は少しでも時間があれば、百貨店の化粧品フロアをめぐることを
ライフワークとしているのだが、
いつもながら、女性たちが美しさを求めてメイクカウンターの前に
座っていることの多さに圧倒され、勇気づけられ、
そしてなお、挑む気持ちでいっぱいになる。

カウンター越しにビューティアドバイザーと話す様子には
国境など全くなく、
ただただ、自分の未来の美しさを求める気持が溢れている。
そんな女性たちに美容を提供するプロとして、
テクニックや知識をしっかり伝えることはもちろんだが、
他にも決して、忘れてはいけないことがある。

今は亡き、偉大なるファッションデザイナーが服作りで
最も大事にしたのは「愛を込めること。」
「生地を愛せば、生地がこうして欲しいとささやく。
偽りのない気持ちで作った服の良さは、
着る人、見る人に必ず伝わる。」
それが信条であったそうだ。
また、日本の若者に伝えたいことを尋ねると、
「トイレで手を洗ったら、次の人のために洗面台を拭く事。」
と即答されたそうだ。

私はもう、決して若者ではないのだから、
自ら次の人のために洗面台を拭くだけではなく、
「拭いてあげてね。」と、
伝えていくことをしなければならないと、強く、思う。
そして、伝えていく自分になるためには、
自分を律することが必要なのだとも。

その人に伝える何か。それを提供するには、愛がいる。
美容という仕事には、特に、手指から伝わる愛が必要だ。

35年前、私が開けたフォーチュンクッキーの中には、
心から望んでいた「美容」の文字の紙きれがはいっていた。
その紙を今もなお、胸元のポケットに入れたまま、
嬉々として、歩いていこう。
その人が望む美容のフォーチュンの歩幅にそいながら、
愛をもってこれからも、さらに歩き続けよう。