2019年5月15日水曜日

京都OHBL奥田浩子のBeauty Memories     ” 開け ビューティードアーズ”


小学校5年生の時、家庭科の授業で刺繍の仕上がりがとてもいいと、
先生に褒められた。
高校の美術の授業では、オリジナルの絵本を作った。
タイトルは「ひなこさんのお見合い」お見合いを通して
本当の自分らしさに気付いていく物語は、先生から絶賛された。
もちろん成績は最高得点!イェーイ! V V V !
だから、自分はちょっと手先が器用な子、
オリジナルな発想が得意な子、
そんな風に勝手に有頂天になり、
勘違いしてしまった。

その後私は、すばらしく前衛的で、
また、その当時とてつもなく勢いがあり、
美容業界に革命をおこしたシュウウエムラの
アトリエという環境の中で、
自分の勘違いと甘さをこれでもかと思い知らされ、
技術を身につけることの真髄を教わった。

毎年2回行われる一週間の研修は大変厳しく、
早朝から深夜まで技術を学び、
評価が悪い次の年は、契約破棄という条件だった。
私は入社して1年目はそこそこであったが、2年目にどん底に落ちた。
次から次へと入ってくる新人のメンバーにどんどん追い越され、
なんとビリから2番目の結末で、そのビリは研修の一週間前に
入社したメンバーという、最低のあり様だった。
今でもその時の、人生最大の恥ずかしい、情けない、
どこかに消えてしまいたい感情を、忘れることはない。
ピリピリした緊張感の中、
私の人生最悪の結果が大きくはりだされた表を見て、
1人の先輩が私の肩をポン、と軽く叩いてくれた。
その当時の時間を共有した仲間は、最高のライバルであり
、一生涯を通じる最高の心の友となった。

その後、契約破棄が決定されるであろう最後の研修に向けて、
私はそれまでの人生の中で最大に自分を追い込む練習を、
毎晩、深夜まで重ね続けた。
グロテスクな言い方だが、指から血が出るほど練習した。
そんな深夜の練習を続けていたころ、ある出来事があった。
「あぁ、そうか、そうだったのか、こうすればよかったのか。」
何とも表現しにくいのであるが、
深い感動が身体中をかけめぐり、ひとり、号泣した。
ひたすら練習する事の大切さと、
決して驕らない自分への戒めを痛いほど感じ、
技術者としての一枚目の扉が、やっと開いた瞬間だった。

その時の練習が報われ、研修でのリベンジを果たし、
この仕事を続けてこられた私が、今、ここにいる。
技術の仕事とは何なのか、
仕事を続けていくためのメンタルをどのように保っていくのかを、
痛感できたあの環境に、今も心から、深く、深く、感謝している。

一枚目の扉が開いて安心したのもつかの間、
すぐに、この扉はずっと続いていくであろう事にも気付かされた。
これからも、いくつもの扉を努力して見つけ、
そして開いていかなければ、技術の仕事を続けることはできないのだと。
最後の最後まで、開かねばならない扉は、必ず存在するのだとも。

念願の路面店を6月1日にオープンする運びとなりました。
これもひとえに、今までご愛顧いただいた皆様のおかげだと、
心より厚くお礼を申し上げます。
その人の、いくつもあるであろう美しさの扉を、
誠意をもってご提供したいという気持ちをこめて、
新店舗名は「オーヴルビューティードアーズ」です。
いつでも、扉を気楽にノックして、お立ち寄りください。
そして私たちはこれからも、プロとしてのプライドをもって
美容の仕事人としての扉を開きながら、
精進していきたいと思っております。


また、あけるの? まだ、開くの?
えぇ、もちろん。
美容の仕事人生を続ける限り、扉を開き続けることは、
もう、ずいぶん前から、心に決めているのだから。