2015年4月7日火曜日

京都OHBL奥田浩子のBeauty Memories      “春の隠し味 ”



シュウウエムラのアトリエを退職してフリーランスになりたての頃
京都のとある料理塾に、二年ほど通ったことがあった。
当時の私からすると祖母のような年齢であった料理塾の先生は
大変厳しく、今以上に若輩者だった私は、本当によく叱られていた。

その日の料理を習った後に皆で食事をするのであるが、
漬物好きの私は汁物よりもおかずよりも、無邪気にご飯と漬物を
食べようとして、その順序と立場の知識のなさに無茶苦茶叱られ、
あれからというもの一人で食事をするときも、
決して先に漬物には手を出さない。(ー ー ;)

京都のおばんざいのノウハウはもちろん、食に関するマナーや
おもてなしの心、家庭料理のすばらしさなど、たくさんのことを
教えてくださり、今でも私の大きな財産になっている。

そんな料理塾の教えの中で、特に私がおもしろい!と思ったことは、
「隠し味」であった。

今でも料理の隠し味に、何をいれるのかを考えるのが大好きだ。
デミグラスソースやトマトソースに醤油。
豚の角煮に焼酎。
ポテトサラダにヨーグルトとちょこっと砂糖。
きんぴらや筑前煮、ひじきの煮物にはごま油。
自家製つくねに山椒の実。

思いもよらない隠し味で、ぐ〜んと美味しさがひきたち、
しかしながらその隠し味は決してでしゃばることがない。


メイクにおける隠し味は、眉に加えるパウダー。
今は特に太眉で、パウダーの威力は大きい。
ファンデーションを伸ばす時のスポンジワーク。
ある部分にだけ使うシャイニーなパウダー。
リップのたった一ミリのライン。
目の際に決してつくらない隙間、など。


料理における隠し味、いわゆるメイクでは隠し技で、
びっくりするほど顔が惹きたつ。


やっぱりおもしろい!
そして大切だと思う隠し味と隠し技である。


ところで、また、隠し味の話に戻るが、柑橘系の隠し味を
使う時に、必ずフレッシュなものを使うように心がけている。
フレッシュな柑橘系の果汁は、ちょっと贅沢でも、
爽やかさがまして特に美味しい。

春は別れと始まり、巣立ちや出会いの季節である。
泣いたり笑ったり、はげましたりはげまされたり、
不安だったり希望だったりの、ドラマティックなそんな季節だ。
そんな季節だからこそ、柑橘系のフレッシュな隠し味が必要だ。

ほんのり桜色の花びらが、あっという間にひらひら散り、
ちょっと寂しかったりするけれど、
キュッとフレッシュな果汁を春の隠し味として、
爽やかな風が吹けば、それでいい。

春の甘ったるい風は、時にはちょっと意地悪だったり
不埒だったりするけれど、爽やかな風が最後に吹けば、
私の春は、それでいい。


0 件のコメント:

コメントを投稿